ショーン・バイセル著の 「ブックセラーズ・ダイアリー:スコットランド最大の古書店の一年」を読みました。
私と同じ世代で、1970年生まれの著者が、30歳の時の2000年に生まれ故郷であるスコットランド南部のウィグタウン(Wigtown)で本屋を偶然買い取り、そこから古書店の経営者としての生活が始まります。
そのウィグタウンは、古書店が多い街で、毎年ブックフェスティバルが行われているそうです。著者の本屋は「The Book Shop」というまさに!という名前で、タイトルのとおりスコットランド最大の古書店だそうです。約10万冊の本があるそうです。
日々の出来事やその日は何冊本を扱ったかなどが日記形式で描かれています。風変わりなお客さんや従業員などの読んでいて、光景が目に浮かぶようで楽しいです。
私には古書店はやりたいという夢があるので、たくさんの本があって、希覯本も扱っているというビジネススタイルは憧れです。ニューヨークのストランドブックストア(Strand Bookstore)もそうですが、こんな本屋が街にあったら・・と思います。
この本の話に戻りますが、ある日の日記に、1679年出版された『デカメロン』の2冊をイタリア人女性が買っていった日のことが書かれています。
それをきっかけに、その本『デカメロン』を買い取ったときのエピソードに触れられており、この本の持ち主は一人住まいだった女性の遺品の中にあったとあります。
かなり荒れた状態の部屋の中でこの本は見つかります。彼女の両親がイタリアから移民としてやってきて、この家でカフェを開き、一時は繁盛店として切り盛りしていたようで、その後一人娘である彼女は店を閉じ、その家で一人暮らしたようです。
夢の跡の住処で、彼女の両親がイタリアから持ってきたわずかな荷物の一部であったに違いないと著者は思ったことが書かれています。
古書店には、売るだけでなく、買い取るという業務もセットとしてあり、本だけでなく思いを、本の作者だけでなく持ち主の思いも引き継ぐ側面をあります。
文章はかなりシニカルな書き方がされているのですが、それがまた冷静で面白いです。
本の街で、古書店か~。私にとっては、とても気持ちがリラックスできる本でした。
/ ショーン・バイセル著 :矢倉 尚子訳
東京 : 白水社 , 2021
335p , 20cm
書名原書綴り :The Diary of a Bookseller
著者原書綴り : Shaum Bythell