umemedaka-style’s diary

本と旅をつなぐブログ

2018-01-01から1年間の記事一覧

第53号:ヴァカンツァはイスキア島へ・・・「ナポリの物語2 『新しい名字』」

エレナ・フェッランテ著のナポリの物語シリーズの第2巻の『新しい名字』(原題 Storia del nuovo cognome)を読みました。 待望の第2巻です。イタリアでは2012年に発刊されていたようですが、日本では今年2018年5月に発刊されました。私はうっかりリサーチ…

第52号:I LOVE 神保町・・・「珈琲が呼ぶ」

片岡義男さんの「珈琲が呼ぶ」で、私にとっては、懐かしの神保町の「ミロンガ」と「ラドリオ」が出てきました。 大変勝手ながら私と神保町について。 神保町という町について、初めて他人から熱く語られたのは、埼玉の県立高校に通っていた高校生の時。その…

第51号:「六月の雪」とは・・・台南

2018年5月に発刊された乃南アサさんの「六月の雪」。 台湾の台南を舞台にしている。 主人公杉山未來は、祖母と二人で東京で暮らしている。両親は仕事の関係で、福岡で暮らしている。 未來は、アニメの声優を目指していたが諦めて、派遣社員で働いていた。派…

第50号:知らなった台湾・・・「流」

2015年に芥川賞を又吉さんが受賞した時に、直木賞を受賞した東山彰良さん。 彼のルーツである台湾を舞台にした「流」。 その頃、お気に入りだったBS日テレの「久米書店」に東山さんが登場されていたので、この本を読んだのでした。 長期にわたり戒厳令が続く…

第49号:本の行商人たちに捧ぐ・・・「モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」

以前、このブログの第22号で、内田洋子さんの「十二章のイタリア」の中で、特に印象に残った一章として、「本から本へ」というタイトルの章を取り上げました。 umemedaka-style.hatenadiary.jp その本の行商の村モンテレッジォに関わる話が、今年2018年4月に…

第48号:知らないとは恐ろしい・・・「サラの鍵」

久しぶりに、衝撃の内容とストーリーテリングの素晴らしさに感心した1冊でした。 タチアナ・ド・ロネ著「サラの鍵」。 2010年に日本で発行された時点で読もうと思いながらも、すっかり忘れて数年が経過していました。友人が読んだと教えてくれたことで思い出…

第47号:小説でしか知らない芦屋・・・「ミーナの行進」

小川洋子さんの書いた「ミーナの行進」を読みました。 主人公朋子が、伯母家族の住む芦屋の家に、小学校から中学校へ上がる1年間過ごした様子が描かれています。従妹のミーナは、体が弱く、色の白い美少女。彼女とも打ち解けて過ごす様子がかかれています。 …

第46号:護国寺をぶらりと・・・「生きるとか死ぬとか父親とか」

長くお休みしており、失礼しました。 サマーヴァケーションが終わり、ほっと秋を楽しもうとしたところに、台風の影響による関空閉鎖。お客様が搭乗するはずの飛行機が次々と欠航⇒代替便にヤキモキ・・・、もう疲れました。そして、今週やっと落ち着いて、本…

サマーヴァケーションでお休みです。

早めにご連絡すればよかったのですが・・・(だらしなくて、すみません)。 仕事柄、夏場はお客様のサマーヴァケーションをサポートすべく、猛烈な忙しさのため、 お休みさせていただいています。 9月中盤以降から再開できる見込みです。 皆様もよいサマーヴ…

第45号:「アヴェンティーノの丘に行くのなら、朝でなければ」・・・『須賀敦子のローマ』

「彼女の書く文章がリアルタイムで読みたかった」と私が心から思う「彼女」というのは、須賀敦子さんのことである。 この『須賀敦子のローマ』は、須賀さんとも親交のあった大竹昭子さんが、須賀さんの書いたローマについての文章と、その場所を写真におさめ…

第44号:五行山の大理石のすり鉢・・・「平松洋子の台所」

旅に出る度に、キッチングッズを記念に買ってきていた。 2001年のパリでは、ル・クルーズの青の琺瑯鍋、グアムのKマートではマーサスチュワートのキッチングッズ、北京ではお茶のポットに、いかにも普通で中国っぽいスープボールとレンゲ、ソウルではチゲ鍋…

第43号:「ティラミスとエスプレッソ」が流行ったころの九十九里

今から思えば、80年代のバブルの頃には「イタ飯ブーム」というのがあって、その流れの延長で、90年代にティラミスが流行ったのかもしれない。 当時、「エスプレッソ」として、今まで飲んだことのない苦いコーヒーが日本でも市民権を得はじめたが、イタリアで…

第42号:小説の中の静謐な真鶴・・・「真鶴」

G.W.後半、真鶴のあたりは渋滞しているだろうなと、想像してみる。 以前は、小田原に泊まりに出かけることが結構あったので、そのついでに真鶴を横目に見ながら国道135号線をドライブしたりもした。それでも、真鶴半島の突端の三ツ石の方面まで足をのばした…

第41号:「母の遺産」に出てくる箱根のホテル

今日、たまたまテレビのチァンネルを変えていたら、BSで箱根のつつじの美しいホテルの庭が出ていた。旧三菱財閥の岩崎彌太郎の別邸だったという。それを見ていて、水村美苗さんの新聞小説「母の遺産」に出てきたのは、あ、このホテルのことかと思った。 その…

第40号:葉山にショートトリップ・・・「黄色いマンション 黒い猫」

年齢を聞かれたときには、キョンキョンと同い年と答える友人が紹介してくれた本「黄色いマンション 黒い猫」。小泉今日子こと、キョンキョンが書いた本。 何の気なしに読み始めたけれど、短い文で綴られる34のエッセイは、どれもすっと入ってきて、興味深く…

第39号:続編は出ないまま、「くそったれ、美しきパリの12か月」

2006年に単行本で、日本語訳が発売された「くそったれ、美しきパリの12か月」(原題:A year in the MERDE )。スティーブン・クラークという著者になっているが、原文では、Stephen Clarkeという名ででている。 この本は、その後、続編が出ないまま、早10年。…

第38号:壇奇放(泡)亭が住んだサンタクルス・・・「火宅の人」そして「壇」

先週は、お休みしまして大変失礼しました。 2月末から3月上旬にかけて、ヨーロッパは天候が大荒れでしたが、ようやく天候が回復してきた先週あたり、私の担当するお客様がどのグループも、バルセロナ、ロンドン、パリ、フィレンツェ、ローマ等に旅に出たとこ…

第37号:「存在の耐えられない軽さ」のプラハ、そして今

先日、NHKで「チョイ住みプラハ」という番組がやっていて、この番組は俳優やミュージシャン、料理人といったその世界で長年活躍してきた年配者と若手俳優が1週間程、海外のとある町で共同生活をするという番組。自炊をして、その町で名物を食べて、地元の人…

第36号:私の「悲しみよこんにちは」のイメージ・・・サン・トロペ

今日は、フランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」(BONJOUR TRISTESSE)。 「悲しみよこんにちは」と聞いて、斉藤由貴さんの曲のメロディラインがぱっと思い浮かぶのはおそらく40overの方ではないでしょうか。 フランソワーズ・サガンが1954年に、こ…

第35号:ケレット氏が教えてくれた少し前のザグレブ・・・「あの素晴らしき七年」

イスラエルのテルアビブ生まれで在住のエトガル・ケレット著の「あの素晴らしき七年」。この本にたどり着いたのは、なぜだろうと思い返していたが、結局わからなかった。去年の私の手帳の読みたい本のリストにこの本の名前が書かれていた。 ケレット氏の本は…

第34号:やっぱり、ローマ?・・・「遠い太鼓」

この村上春樹さんの『遠い太鼓』は1986年からの3年間、村上春樹さん(正確にいうと村上さんご夫妻)がヨーロッパで暮らした時のことが描かれている。この期間に長編では『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』と短編では『TVピープル』を書いたという…

第33号:ゴッホ終焉の地オーヴェール・シュル・オワーズ・・・「たゆたえども沈まず」 

2017年10月に単行本化された原田マハさんの小説「たゆたえども沈まず」。 揺蕩う(たゆたう)という言葉は、あまり使わないが、「物がゆらゆら動いて定まらない。ただよう。」ようすを表す言葉で、「動揺する」「ためらう」など、心の動きも表す言葉である。…

第32号:パリの元“ムルロー工房”・・・「ロマンシェ」

原田マハさんの「ロマンシェ」は、ラブストーリーと聞いて読み始めた気がするけれど、少しコメディタッチで奇想天外なストーリーの中に、パリのリトグラフ工房 “idem ”が出てきて、その絡め方が上手だなと思ってしまった。 主人公の美智之輔は美大を卒業して…

第31号:豪華旅行にポジターノ・・・「朝の歓び」

またまた、宮本輝さんの本です。ナポリから南下し、ティレニア海に面したソレント半島の付け根にあるポジターノが出てくる「朝の歓び」。アマルフィから夏は船、または通年バスで行くことができる。 この本、私は2005年に読んだのに、読んだことを全く忘れて…

第30号:ハメーンリンナのサマーハウス・・・「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

村上春樹氏の作品は、ほぼ欠かさず読んでいるが、彼の作品自体を語ることは、私としてはおこがましくて、なかなかできない。今回も小説の内容は、ともかくとして、この小説の中に出てくる、多崎つくるが友人を訪ねたフィンランドのハメーンリンナについて書…

第29号:「ここに地終わり海始まる」・・・ロカ岬

宮本輝氏が書いた小説「ここに地終わり海始まる」。私がこの本を読んだのは、2005年で、ポルトガルのロカ岬がヨーロッパ最西端の岬であることは知っているけれど・・・という頃だった。 この小説では、ロカ岬の石碑に書かれた「ここに地終わり海始まる」とい…

第28号:1950年代のロサンゼルス・・・「ロング・グッドバイ」

昨日と今日と日経新聞の文化面に、「チャンドラー長編7作 翻訳終えて」として、村上春樹氏によるインタビュー記事が出ていた。 2007年に、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」の翻訳をして、今回の「水底の女」をもって、長編7作を翻訳し終え…