昨日と今日と日経新聞の文化面に、「チャンドラー長編7作 翻訳終えて」として、村上春樹氏によるインタビュー記事が出ていた。
2007年に、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」の翻訳をして、今回の「水底の女」をもって、長編7作を翻訳し終えたそうだ。
私もチャンドラーの作品を読んだのは、やはり村上春樹氏翻訳の「ロング・グッドバイ」が最初だった。それまでの私といえば、主人公である私立探偵フィリップ・マーロウの名前は聞いたことはあるものの・・・、という感じだった。そういえば、20年前くらいによく休みになると行っていた南葉山のレストラン「マーロウ」(今はプリンの名店として有名らしい)の名が、フィリップ・マーロウから来ていてるというのも、なんとなくピンとこなかったくらいだ。
それに、探偵もの、ミステリーというものをほとんど読まなかったというのもあった。しかし、この作品を読んだときに、ただの謎解きではなく、もっと人間らしさのある、滋味深いものに感じたことは確かだった。
ノートに書き留めておいた、以前、村上春樹氏がこの「ロング・グッドバイ」について語ったことを思い出す。この小説には、フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」に通じる、魅力のある人間がかかわっているといったことを。
フィリップ・マーロウはもちろんのこと、この小説で登場するテリー・レノックスという男。寂しげで、やさしさがあり、見た目にも格好いいが、人に頼らない、謎めいた男。
このテリー・レノックスはこの小説の肝とも言える人物である。他にも様々な興味のわく人物が登場している。それは戦友であったり、友情と人間味を持ち、権威主義に流されない同士だったり。
この小説の舞台は、西海岸のロサンゼルス街中やその郊外アイドルヴァレー(架空の地名らしい)という住宅地、国境を越えたメキシコ等が出てきたりする。
1950年台といえば、戦後それほど経っていないわけだが、アメリカは日本とは違って、びくともしておらず、豊かだったんだと、この小説を読みながら感じた。
そのころのロサンゼルスは、私の中ではアメ車がブルバードを今よりももっと悠々と走っているイメージ。郊外のお金持ちの住宅街はすでに切り開かれつつあって、メキシコから働きに来る人も多いというようなイメージが浮かんできた。あくまでも、私のイメージだけど。
もう、17,18年前のことだけれども、ロサンゼルスからやや南のトーレンスに友人が住んでいて、遊びに行ったことがある。そこからレンタカーで、グランドキャニオンまでに交代しながら8時間近いドライブ。なんとなく、そんな思い出と重ねて、この本を読んだ。また、ロスに行きたいかも。
ロング・グッドバイ / レイモンド・チャンドラー著 ; 村上 春樹訳
東京 : 早川書房 , 2010
645p ; 16㎝