2020年2月、第162回直木賞を受賞した川越宗一氏の「熱源」を読みました。
読みたいと思いつつ、だいぶ遅くなってしまってしまいました。
日本語を学ぶ中で、アイヌ語、そして先住民であるアイヌ人について、私自身少しでも知るきっかけにしたいと思って読み始めました。アイヌ語は、SOV型で抱合語です。日本語がSOV型で膠着語であることを考えると、日本語とは起源からして大きく異なることが想像されます。
そして、アイヌ語研究と言えば、金田一京助氏も必ず出てくるだろうという私の中で興味ありました。読み進めると後半にちゃんと登場しました。
なにしろ、私の知らないことばかりで衝撃がありました。そして、この本にはアイヌ人だけでなく、同じように樺太に住む先住民オロッコ(ウィルタ)の人々も出てきます。この本を読むと、たまたまアイヌの人が日本人(和人)と交易があり、少数民族であり、近くに住んでいたため日本に所属(という言い方が正しいのかわかりませんが)する形になってしまいましたが、生活やその地の歴史によっては、もっと違う形でいま生きているかもしれないと考えさせられました。
主要な登場人物の一人であるアイヌ人のヤヨマネクフ(山辺安之助)は、子ども時代を現在の江別市内の対雁(ついしかり)で過ごします。樺太からこの地に移り住んだアイヌの人たちをイシカリアイヌとも呼ばれていたようです。その後、ヤヨマネクフは故郷である南樺太へ戻ります。その後の彼の人生は、白瀬矗隊長の南極探検隊に参加したり、帰国後は樺太の落帆村の総代になったりしますが、この物語の中でも書ききれないほどの人生です。
その他の登場人物も、とても興味深い人たちが次々に出てきます。
ポーランド独立のために活動したという嫌疑で、ロシア政府によって北樺太(北サハリン)に流刑にされ、その後18年の刑を全うし、民族研究者となったブロニスワフ・ピウスツキやその弟で、のちにロシアからポーランド独立後の初代国家元首となったユゼフ・ピウスツキも登場して、樺太や日本の話だけにはとどまらない壮大な物語です。
拡がりすぎてしまうので、話を樺太に戻すと、稚内と南樺太の玄関口・コルサコフ(大泊)間は、夏の時期だけフェリーが定期運航していました。約8-9時間かかるようです。
稚内市のホームページによると、2019年から運休となっているそうです。(運休の停止理由はこれを見る限りは、わかりません。)行くとしても、パスポートとロシアの電子ビザが必要です。とても遠く感じます。
今の南樺太は、どのような様子なのでしょうか。いつかは見てみたいという気持ちが湧きました。
熱源 / 川越 宗一著
東京 : 文藝春秋 , 2019.8
p.426 ; 20cm
『熱源』に出てきたアイヌの生活スタイル、装束などをビジュアルで見たいときには、これが↓おすすめです。