ギリシャ神話は好きで、今までもいろいろな本を拾い読みしていました。
本によってディテールには違いがあり、話自体もやや奇想天外ではありますが、その世界観は日本人が「古事記」「日本書紀」を断片的にも知っているように、馴染んでいるようです。
今回読んだ「ギリシャ神話」は、児童文学の作家であり、翻訳家として知られる石井桃子さんの編・訳です。児童文学書なので、とても分かりやすく書かれています。
この本にも私が大好きなシチリアのエンナを舞台とする大地の母デメーテルの話が出てきます。以前、読んだものとディテールは違いますが、お話を読みながら高速道路を走りながら車窓からみたエンナの風景を懐かしく思い出しました。
なかなかエンナを目的に出掛けることはありませんが、アグリジェントからカターニャやタオルミーナに移動する際に、A19という高速道路を通りますが、その車窓からエンナの草原が見られます。
高速から見えるエンナの景色を入れてみました。
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それでは、かいつまんであらすじを少し・・・
デメーテルは土から生まれたものの全ての母で、穀物を芽生えさせたり、果物を実らせる秘密を知っていました。
神々の父といわれるゼウスとの間にペルセポネという美しい一人娘がいました。ある日、ペルセポネはエンナの牧場でニンフたちと遊んでいました。とても美しく気になる、水仙のように見える、1つの花を見つけ、それを引っ張ると大地が割れ、大きな口をあけ、冥界の王ハデスの4頭立ての馬車が勢いよく飛び出し、連れ去られてしまいました。
母デメーテルはペルセポネを探し続けましたが見つからず、深く悲しみ、暗いほら穴へ姿を隠していまします。姿を消したデメーテルは人間の世界に降りていき、人を助けたり、旅をしていました。
大地の母デメーテルが畑の面倒を見なくなってから、作物は目を出すことも育つこともできなくなりました。
そこでゼウスはイリスという虹の女神に、デメーテルがいないと生き物は育たず、みんな死んでしまうので早く帰ってくるようにを伝えに行かせましたが、だめでした。他の神々を行かせても、デメーテルをなぐさめることは出来ませんでした。
そして、とうとうゼウスは、ヘルメスを冥界の王ハデスのもとに行かせ、母の手にペルセポネを返すかどうか確かめにいかせました。その話を耳にしたペルセポネの喜びようを見て、ハデスもヘルメスの申し出を聞き入れないわけには行きませんでした。
申し入れをしぶしぶ受けたハデスは、馬車に乗ろうとしたペルセポネにざくろの実を食べさせました。ペルセポネはそれを4粒だけ食べました。冥界のものを食べた者は冥界から出られないということを知らずに・・・。
ペルセポネはデメーテルのもとへ帰りました。しかし、喜んだのもつかの間、デメーテルはペルセポネが冥界の食べ物を食べたことを知ります。
デメーテルはゼウスに助けをもとめ、神々の父であるゼウスはデメーテルの頼みをきき、ペルセポネが冥界で過ごすのは食べたざくろの実の数、つまり4カ月でいいということになりました。
デメーテルがペルセポネといられる8カ月は、美しいエンナの谷へ帰って、畑や果樹園で働き、農夫やパンを焼く女の手助けをしたり、いろいろな仕事の世話をしました。
ペルセポネが冥界にいる4カ月間、デメーテルはまたほら穴の暗い陰に隠れてしまいました。そのあいだ、生き物はまた眠ってしまいましたが、農夫たちは恐れませんでした。なぜなら大地の神デメーテルが戻ってくることを知っていたからです。
というお話です。
この本では、季節のはじまりの話とは出てきませんが、一般的には、このデメーテルの隠れてしまう4カ月が冬であり、この話は季節のはじまりの話といわれています。
このエンナは、シチリアなのに冬は雪が降り、厳しい冬が来るところとして知られています。まさにこのお話にぴったりです。
ギリシャ神話なのに、シチリアって思われるかもしれませんが、ローマ人よりも前に現在のイタリアあたりはギリシャ人が住んでいたわけで、シチリアには古代ギリシャの名残がいまでも見られます。
シチリアにも行きたくなります。
ギリシャ神話 ; 石井 桃子 編・訳
東京 : のら書房 , 2000
21cm , 341P