パオロ・ジョルダーノ著の「コロナの時代の僕ら」を読みました。ここ最近話題の本です。
著者はイタリア人で、物理学を学んでいたこともあり、数学的な要素を盛り込んだ処女作の『素数たちの孤独』では、イタリアで権威あるストレーガ賞を受賞しています。プラス補足するとかなりのイケメンです。
さて、この「コロナの時代の僕ら」は、イタリアにおいて最も古くから発行しており、ミラノに本社のある新聞「Corriere della Sera(コリエーレ・デッッラ・セーラ)」に2月末~3月頭にかけて書き下ろした感染症にまつわるエッセイ27本をまとめたものです。ローマの自宅から発信しています。
新聞記事だったことを踏まえて読んだほうが、時間の経過が理解できます。日が経っていくにつれて、著者の今後への考え方が一貫して強くなっていく様子が伝わります。また、著者は日の経過とともに、コロナショックが始まった当初のことを回想し、政府の対応や周囲の人々、また自分の反応や態度を検証してみたりしています。
アフターコロナでは、著者もこの文章の中で「条件付きの日常と警戒が交互する日」が始まると書いています。
あとがきでは、イタリア全土でロックアウトされた後の3月20日付で寄稿されたものが載せられており、「コロナウィルスが過ぎたあとも、僕らが忘れたくないこと」というタイトルでとても熱く、強いメッセージが込められています。
著者は「僕は忘れたくない」という言葉からスタートする9つの決意みたいなものを書いています。
日本でも「ニューノーマル(新常態)」がはじまると言われています。私を含め、日本の読者もこれを読んで「私は忘れたくない」と書き出してみようと言う気持ちになるのではないかと思います。
3月20日付の新聞記事の発行後、日本語訳では出版元のウェブサイトでの一定期間の掲載を経て、わずか1ヶ月で単行本として発売されました。異例の早さでした。
「鉄は熱いうちに打て」というように、いまこの混沌の中で読むことは1つ意味があるのではないかと思います。
コロナの時代の僕ら / パオロ・ジョルダーノ著 ; 飯田 亮介訳
東京 : 早川書房 , 2020
128p ; 19cm
原書名 : Nel Contagio
著者名原綴 : Paolo Giordano
イタリア語の原題は「Nel Contagio」であり、素直に訳すと「感染の中で」というような意味です。
「コロナの時代の僕ら」というと、個人的にはガルシア・マルケスの「コレラの時代の愛」と重ねてしまいましたが、原題と邦題には少し乖離を感じなくもありませんが、このタイトルはインパクトがあり、プロモーションとしては上手だなあと感心しました。