今日は、フランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」(BONJOUR TRISTESSE)。
「悲しみよこんにちは」と聞いて、斉藤由貴さんの曲のメロディラインがぱっと思い浮かぶのはおそらく40overの方ではないでしょうか。
フランソワーズ・サガンが1954年に、この作品をかいたのは18歳の時。そう考えると本当に天才だと思います。
主人公のセシルは17歳で、その父はヤモメで『年齢のない男達たち』と表現しているように、若々しく、女たらし。その父とセシルは2人で自由で陽気で愉快に暮らしていました。
その年の夏はパリから移動して南仏の別荘で起きた出来事がこの話の中心となります。その別荘では、セシルと父と父の愛人エルザとの3人奇妙な生活が始まり、そこに亡き母の友人だった42歳のアンヌが現れ、その知性的で聡明で、洗練されたアンヌと父が一夜のうちに結婚を決めてしまいます。セシルは父とアンヌを引き離そうとし、策略のシナリオを考え、彼氏であるシリルと父に振られた愛人エルザと共謀して、それを実行します。
その続きは書きませんが、なかなか面白い展開で、先が気になる話です。
それにしても、18歳でこれを書いたってすごい。その当時のサガンがこの話に出てくるセシルそのもので、シニックで、クールで、知的で大人びているけれど、体は子供らしいそんな少女のような大人のような女性だったのかなと想像してしまいます。
主人公セシルは大人びたところと、ずる賢さと、父離れできない子供なところを持ち合わせていて、モラトリアムから抜け出せない少女がこの夏の経験によって、深く考えさせられ大人になっていく心情の表現が素晴らしいと思いました。
さらに、この小説の舞台背景もいかにも粋に暮らす、美しいパリジャンたちが描かれていて、南仏でのバカンスの生活ぶりが今から50年以上も前というのに古さを感じさせない鮮やかさを放っていて、さすがフランス文学という感じがしてしまいました。
この小説の中に、南仏とあるだけで、たしか具体的には別荘の場所を書いていなかったと思いますが、私の中では、サン・トロペのイメージがぴったりです。
サン・トロペといえば、ブリジッド・バルドーことBEBEが 愛した❝タルト・トロペジェンヌ❞というスイーツが有名ですね。ブリオッシュに、カスタードクリームが挟んであって、奇をてらわないおいしさ。素直にぜったい外さないって感じのスイーツです。
サガンもサン・トロペにはよく来ていたらしく、そういうイメージがこの小説と重なるのです。あくまでも私のイメージです。
悲しみよこんにちは / フランソワーズ サガン 著 ; 河野 万里子 訳
東京 : 新潮社 , 2008
p197 ; 16cm
著者原綴: Francoise Sagan