umemedaka-style’s diary

本と旅をつなぐブログ

第47号:小説でしか知らない芦屋・・・「ミーナの行進」

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小川洋子さんの書いた「ミーナの行進」を読みました。

 

主人公朋子が、伯母家族の住む芦屋の家に、小学校から中学校へ上がる1年間過ごした様子が描かれています。従妹のミーナは、体が弱く、色の白い美少女。彼女とも打ち解けて過ごす様子がかかれています。

 

六甲山があるので、海からの暖かな風がとどまり、住みやすい高台の洋館のようなイメージで書かれています。時期は1972年。冒頭ではそのお屋敷はすでになく、回想するような形でかかれています。

 

主人公朋子は、父親をなくし、2人暮らしだった母が、東京の洋裁学校で学びなおすため、岡山から単身、この叔母を頼り、芦屋の家に来るわけですが、伯母の夫である伯父の一族は「FRESSY」という健康飲料を販売する創業者一家で、そこには一人娘で従妹にあたるミーナ、ドイツから嫁いだローザおばあさん、住み込みで勤める米田さんという魅力は触れる人たちも住んでいて、みんなが朋子に親切にしてくれます。

 

米田さんは住み込みの家政婦さんですが、ローザおばあさんが異国の地に嫁いで過ごすのを支え続け、一家の司令塔ともいえる存在で、みんなが一目置く存在です。そういうフラットな関係性もいいし、当時にしては、生活スタイルも西洋風でクリスマスなどは本格的なドイツ風のクリスマスパーティーが行われたり、朋子の目からその時代に珍しい新鮮なものであったことが伝わります。

 

この芦屋の風景は、何とも素敵で、私は芦屋には行ったことがありませんが、須賀敦子さんの小説や谷崎潤一郎の「細雪」の舞台として出てくるので、その雰囲気とオーバーラップするのでした。(もちろん、村上春樹さんも)

 

須賀敦子さんの描く小説の風景も、「細雪」の次女幸子が住み、雪子やコイさんが居心地よく居候する芦屋の様子もたんなる高級住宅街というだけでなく、なんとなく関西弁とあいまって、関東の人間からみるといい意味で明るくて、飾り気のない印象で描かれており、町の風景とともに、なんとなく素敵なのです。

 

この「ミーナの行進」でも、物語の風景の大きな要素として、芦屋の町がでてきます。旅行で見に行きたいという気持ちはあまり出ませんが、小説の中で、旅してみるのがいいのかもしれませんね。

 

ミーナの行進 (中公文庫)

ミーナの行進 /  小川 洋子著

東京 ; 中央公論新社 , 2009

15cm / 348p