第6号:いざ鎌倉、ってほどでなくても鎌倉へ。「ツバキ文具店」

先日、NHK総合テレビでドラマが放送されている「ツバキ文具店」。原作は、小川糸さん。単行本自体は2016年4月に初版が発行された。ドラマの方では、副題に”鎌倉代書屋物語”となっている。ドラマは途中まで見たところ、本の筋書きとは、ちょっと違うよう。

 

主人公は、雨宮鳩子。ポッポちゃんと呼ばれている。

鎌倉で、文房具屋兼代書屋「ツバキ文具店」を営んでいた”先代”の祖母・かし子が亡くなり、海外に行ってたポッポは帰国したが、死に目には会えなかった。

 

ポッポは生まれてすぐに、母と引き離され、母とは会っていない。その詳しい理由はわからない。祖母の“先代”がポッポを乳飲み子のころから育ててくれた。書の鍛錬に関しては特に厳しく、幼いころから特訓させられたポッポは、思春期を過ぎ、先代に反抗するようになり、先代から逃げるように海外での放浪生活を始めてしまった。しかし、先代なき後、鎌倉に戻り、結果的には先代の店を引継ぎ、1人で切り盛りすることにした。

 

代書を頼みに来る人のキャラクターと、そして、その手紙の依頼内容がそれぞれに興味深い。その手紙ごとの書き方、さらに紙や封筒さらに切手、万年筆や筆など筆記具の選び方の根拠も、なるほど~と感心してしまう。

 

この本には、その依頼ごとの手紙、例えば、かつて披露宴に来てくれた人たちに離婚を知らせる活版印刷の手紙や、太字の万年筆で書いた借金の断り状など、一癖ある依頼をポッポが想像をめぐらしながら代書したものも載せられている。結果的には、これが確かにベストかも!と思わせる仕上がりになっていて、感心する。こうやって、手紙のアイテムと内容を相手を思いながら書けたら、どんなに素晴らしいだろうと思ってしまった。

 

また、ポッポの住む鎌倉での生活を暖かく見守ってくれるお隣のバーバラ婦人や男爵、パンティー、モリカゲさんと娘のQPちゃんなど、優しくて、素敵な人たちもこの物語を味わい深いものにしてくれている。

 

私自身の鎌倉についての話になるけれど、高校生から大学生の頃には(というと今からすでに20年以上も前のこと)実家の川口から遠路はるばる友人と足繫く、鎌倉に通った時期がある。学生で、かなり暇だったのかもしれない。この本を読んで久々に鎌倉に行きたいと本気で思ってしまった。その足繁く通った中でも、たまたま、この「ツバキ文具店」があるとされる鎌倉宮や荏柄天神あたりによく行っていたので、なんとも懐かしい気持ちになった。あのあたりで、正月早々、3回連続、おみくじで[凶]を引いたのも、なかなかない経験で印象深い。私は、あのころ、あの近辺に行くとレデンプトリスチン修道院のクッキー(鎌倉ユニオンでも売っていたが)をよく買いに立ち寄らせてもらった。いまでも時々、あの厚めで素朴なクッキーを思い出し、食べたくなる。北条高時の腹切りやぐらが、小路の奥にあることを指し示す看板をこの辺で目にしたが、なんとなく怖くて進んでみたことはない。

 

この本のはじめのページには、「ツバキ文具店」の所在を示す手書きの地図があって、「ツバキ文具店」は、材木座の方から見ると鎌倉宮の少し奥となっている。また、北鎌倉の建長寺を上のほうに進むと行ける天園ハイキングコース(行こうと思いながら言ったことがないが・・・)を降りてきたところに位置していることになる。

 

こないだ、たまたま旅番組で、この天園ハイキングコースのある大平山をやっていて、その昔、北条高時の斬首を敵陣にとられないために、家来がそれを持って、この大平山に逃げたという話をしていた。地形的にも、そういうことはあるだろうと納得した。最近、日本史をもう一度勉強しなおしていることもあって、さすがに鎌倉は幕府のあったところだけあって、歴史の観点から見ても、かなり面白いと思った。

 

東京から割と近いのに何か違う空気感とおしゃれっぽさ。この本を読んで、住みたくなる人も増えそう。たまには鎌倉に行ってみてはいかがでしょう。。

 

ツバキ文具店

ツバキ文具店 / 小川糸著

東京 ; 幻冬舎 , 2016 ; 269p ; 20㎝

 

 

鎌倉幕府があったころの鎌倉がわかる1冊>

私の実家の谷中の菩提寺日蓮宗なので、なんだか気になって読み始めたが、北条氏に滅亡させられた比企一族の住んでいた比企谷の話や、鎌倉時代に、幕府のお膝元である鎌倉で、日蓮が辻に立ち、一人説法を行って布教した話なども出てくる。鎌倉幕府における公認宗教、非公認宗教の待遇の違いや、鎌倉幕府の執権や政治手腕、元寇など時代的背景もわかる。

 

小説日蓮  / 大佛次郎

東京 ; 光風社書店  , 1974 ; 455p ; 19㎝

 

日蓮―小説 (1974年)

日蓮―小説 (1974年)