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第5号:「日はまた昇る」を読むと、パンプロ―ナに行きたくなる。

ヘミングウェイ著「日はまた昇る」もまた、高見浩氏により2003年に新訳版が出されている。新訳版を読み直して、またあらためていいなあと思った。

 

主人公ジェイク・バーンズ♂はアメリカ人。アメリカが禁酒法の時代に、パリでは禁酒はなく、アメリカ人にとって、自由を謳歌できるとされていた。そのパリで彼は新聞記者をしていた。第1次大戦の時に負傷を追った過去がある。

 

パリで友人たちと酒を愉しみ、その延長でスペイン北部のパンプロ―ナで、毎年7月に行われるサン・フェルミン祭牛追い祭り)に行くことにした。そのメンバーの中には、かつて愛し合っていて、別れてしまったブレッド・アシュリー♀がいた。ブレッドはイギリス人との離婚が間もなく成立し、ジェイクと結婚する予定だった。そして、その頃は、ブレッドは友人のマイクとつきあっていた。

 

パンプローナまでの旅のようすや、パンプロ―ナの町でのことがたくさん書かれている。パンプロ―ナのホテルモトーヤやカフェイルーニャで過ごした享楽的なフィエスタの1週間。彼らは飲み明かし、闘牛に明け暮れた。

 

ブレッドが、若き闘牛士ペドロ・ロメロと出会い、俗世間に彼を巻き込みたくないと思っていたが、結局彼女は恋に落ちた。ブレッドは、パンプローナからロメロと消えてしまい、数日後マドリッドでロメロと別れたとジェイクに連絡してきた。

 

主人公ジェイクがブレッドと別れた理由は、本書を読んでほしい。複雑な胸の内がある。彼がロメロと別れたブレッドを迎えに行くことにした時の文章がある。とても皮肉だ。

これでいいのだ。恋人を旅立たせて、ある男と馴染ませる。次いで別の男を紹介し、そいつと駆け落ちさせる。そのあげくに彼女をつれもどしに行く。そして、電報の署名には“愛している”と書き添える。そう、これでいいのだ。

 

実際にこの小説は、1925年7月に、ヘミングウェイが友人7人とパンプローナに行ったときの実体験に基づいているという。その旅の仲間が、この小説の登場人物にほぼ当てはめられるようだ。だからこそ、リアルで、人間模様がおもしろく、サン・フェルミン祭のフィエスタの1週間の町の活気が伝わってくるのかもしれない。そして、読者はパンプローナに行ってみたくなる。

7月のパンプローナは、22時近くまで明るく、いつまでたっても日が沈まず、夏のヨーロッパの圧倒的な解放感に、私はいますぐにでも行きたくなる。

 

日はまた昇る (新潮文庫)

 

日はまた昇る  / アーネスト ヘミングウェイ [著] ; 高見 浩[訳]

東京 : 新潮社,  2003

487p ; 15㎝

英文書名: The Sun Also Rises