第134号:カタリ派の地・・・「聖灰の暗号」
先日、出張でトゥールーズとその周辺のワイナリーを巡っておりました。
トゥールーズ周辺を舞台にした小説を読んでから行こうと思っていたのですが、結局、旅の移動の途中に読みつつ、帰国してから読み終えました。
「カタリ派」という名前は、以前も聞いたことはあったのですが内容も分からず、この小説に出てきて始めてしりました。オクシタニ地方のトゥールーズから南西部がこの小説でも舞台になっており、フランスのカタリ派はアルビジョアとも呼ばれています。
カタリとは清浄を意味し、極めて禁欲的で質素な生活、偶像崇拝を好まず、教会がなくても洞窟や炭焼き小屋などで隠れて祈りを捧げ、伝道師は移動しながら伝道するかたちで、農民のみならず、その土地の領主も強く信仰していたことがこの本にも書かれています。1208年、ローマ教皇はカタリ派を征伐するために、十字軍を開始し、それはアルビジョア十字軍としても知られています。特に、ベジエ、カルカソンヌ、アトランカヴェルは抵抗しました。最後には1244年3月16日のモンセギュール城では、カタリ派の信徒たちが尋問や拷問を受けましたが信仰を捨てることを拒否して火刑に処されました。
正直なところ、私はカルカソンヌにも何回か足を運びましたが、このあたりの歴史についてはあまりよくわかっておりませんでした。今年9月から、3㎞の城壁の全区間が観光できるようになったとのことでアルビジョア派が徹底的に守ろうとしたカルカッソンヌの強固な城壁を目の当たりにできるのではないかと思います。そして、歴史を知っていれば往時に思いをはせることができるのではないかと思います。
この小説では、ローマ・カトリック教会が残そうとしなかった尋問記録や火刑の様子を、教皇の傘下であるベネディクト会の修道僧が個人的には書き残した文書の一部が偶然にトゥールーズ市立図書館で見つかるところから始まります。主人公アキラは研究者ですが、その文書の一部をヒントにその続きとなる文書を探していきます。その文書を見つけ出そうとする別の組織とは?
その手稿を修道僧レイモン・マルティはローマ・カトリック教会の大司教のカタリ派への尋問をオクシタニ語で通訳をして記録を残す職務についていたベネディクト会の修道僧だということがわかります。そして、このラングドック地方(現:オクシタニ地方)のモンセギュール城の近くのモンフェリエの出身でした。
最後には、ローマ教会のカタリ派への尋問、火刑のみならず、この地で起こったことを記した修道僧レイモン・マルティの手稿に電車の中で読んでいたんですが、涙が止まらず・・・
この小説の中では、カタリ派と同じく弾圧された天草の隠れキリシタンについても言及されています。あらためてハッとさせられます。
700年近く前の出来事ですが、モンセギュール城は今も堅牢な城壁をもって聳え、実際にこの地にあったことを今も物語っています。
エキサイティングな内容というだけでなく、歴史の中を見ても、今の世界情勢を鑑みても何が正義なのか、考えてしまいました。
聖灰の暗号〈上〉 / 帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)著
東京: 新潮文庫, 2009.12
362p, 15cm
聖灰の暗号〈下〉 / 帚木 蓬生(ははきぎ ほうせい)著
東京: 新潮文庫, 2009.12
396p, 15cm

