あけましておめでとうございます。昨年もお読みいただき、ありがとうございました。
昨年は、このブログと連動してInstagramも定期的に発信するようになり、皆さまに読んでいただき、反応を返していただきました。本好きの方がこんなにもいるんだと、密かに心が温まり、このコロナ禍の中でも、私の心の灯火(ともしび)となっています。大変感謝しております。
2021年になりました。今年の1冊目は、ロバート・A・ハインラインのSF小説『夏への扉』(新訳版)です。山崎賢人さん主演で実写映画化されるそうです。と、友人から教えてもらい、早速読みました。子どものときに夢中になって見た映画「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のモデルになった本であるということも。
この「夏への扉」は1957年に刊行されて、日本では1963年に翻訳出版されたそうです。この小説の舞台は、1970年のロサンゼルス。実際に刊行された1957年よりも先の未来の設定になっています。
主人公ダンは、技術者で「おそうじガール」や「まどふきウィリー」という機械をつくり、「おそうじガール社」を立ち上げていました。さらに、あらゆる家事をこなす完璧な自動機械(オートマトン)、「万能の召使い」(「ばんのうフランク」という名)や製図機などのいろいろなアイデアを構想したり、試作していました。
しかし、一緒に会社を経営していた友人のマイルズと会社の秘書であり恋人でもあったベルに裏切られて、株主総会で退陣させられる形で会社を取られてしまいした。そんな状況のダンは、保険会社の広告の低体温法睡眠(コールドスリープ)に興味を持ち、愛猫のピートともにコールドスリープで眠ってみるのもいいかもしれないと考えました。マイルズとベルを見ないでいい世界に行けるなら・・。そこで、70年いや、30年も眠ってしまえば、ベルはおばあさんになって、「痛快な復讐」ができるかもしれないなどと考えました。
コールドスリープの契約はしたものの、それはつかの間の思いで、やっぱりそんなことは取りやめることにしました。裏切ったマイルズとベルにこの詐欺的やり方に反論しに出かけていったときに、ベルに精神を麻痺させる注射を打たれて、コールドスリープの契約が彼らにわかってしまい、安息所(サンクチュアリ)に送り込まれてしまいました。ダンは、マイルズとベルに会いに行く前に危険を予期して、マイルズの前妻の継子で、愛猫のリッキーを可愛がっていた11歳のリッキーに「おそうじガール社」の株を譲渡する手紙を送っていたのでした。
そして、ダンが目覚めるとそこは2000年。彼の財産は、保険会社の倒産で無くなっていて、リッキーへ株も譲渡されておらず、リッキーがどこに住んでいるのかもわからない。自動車のスクラップの仕事をしながら、かつて暮らしていたロサンゼルス、2000年のグレート・ロサンゼルスへなんとかたどり着きました。紆余曲折、自分の作った「おそうじガール社(おそうじガール家庭機器・ギアリ工業k.k.)」で役員に迎えられます。そこでは、彼は広告塔の立場を求められましたが、技術屋として仲良くなった同僚から国家機密情報ではあるが、タイムトラベルができる話を聞き、その研究の権威トウィッチェル博士に会いに行きます。
ダンは、リッキーへの心残りがあり、どうしても30年前に戻り、したいことがあったのでした。そして、タイムトラベルをし、2001年のグレート・ロサンゼルスにまた戻ってくるのでした。このさきは是非本で読んでみてください。
それにしても、SFというのは馴染みのない私ですが、この本は面白かったです~。そして、1957年に書かれているのに、彼が開発していたとされる「おそうじガール」など、自動機械(オートマトン)はいま実際に実用化されている発想で、彼が目が覚めた世界の生活の快適さを彼は気に入るのですが、それも現代と重なるものがあり、これが60年も前に書かれたということに、本当にびっくりしてしまうのでした。
さらに、山下達郎さんの曲「夏への扉」の歌詞をあらためて見てみると、この本の事が書かれていて、これまたびっくりというか、自分の無知に少し呆然とするのでした。
ワタクシゴトですが、思いがけないコロナ禍。海外旅行の仕事が壊滅的な状況になりました。私は図書館司書の仕事や日本語教師の勉強という以前から興味があったことに着手はできたので、後退しつつ、少し前進するという暗中模索の毎日です。
この小説の猫のピートが各部屋の扉をダンに開けさせ「夏への扉」を探したように、ダンも「夏への扉」を探していました。そして、私も「夏への扉」を探しています。一つ時間をかけてわかってきたことは、私はやはり海外旅行の仕事が好きだと言う事でした。いやはや、私の「夏への扉」はいったいどこにあるのでしょう。
今年もどうぞよろしくお願いします。
夏への扉 (新訳版) / ロバート・A・ハインライン著 ; 小尾 芙佐訳
東京 : 早川書房 , 2009
350p ; 18cm
書名原綴 : The Door into Summer
著者原綴 : Robert A.Heinlein