2011年11月に刊行されていた「小澤征爾さんと、音楽について話をする」をいまさらながら読みました。クラシック音楽についての話が中心で、特に小澤征爾氏がバーンスタイン氏のアシスタントをしていた時代の話、カラヤン氏に師事していた時代の話、また小澤氏が中心となり、スイスレマン湖畔で世界の若手の才能ある音楽家を集めて合宿形式で行われる夏のアカデミーの話など、とても興味深いものがありました。
家にあるCDやYoutubeで、この本に出てくる音楽を片っ端からかけながら読書をした時間は本当に至福でした。これが読書の愉しみというのだと思いました。
村上氏はクラシックにも(ジャズにも)造詣が深く、素人の私としては、初めて知ることばかりでしたが、指南していただくという感じで音楽を聞きながら、なるほどと思いながら読み進めました。
この本は、国内外で場所を変えて数回に渡り行われた対談(もっとリラックスした雰囲気で行われた様子が感じられますが)について書かれています。
対談の頃、小澤征爾氏は食道がんの手術を受かられたあとで、やっと回復に向かっているというような状況でした。それまで多忙だった小澤氏がこのような村上氏と語り合う時間が取れたのも、時間をかけて術後療養をする必要がある時期だったということも大きいようです。
私個人としては、今回に関しては、村上氏よりも小澤氏に関心があり、2つのアプローチとして読もうと思っていました。
1つ目は、前回小澤征爾氏の父である開作氏にまつわる小説「満州ラプソディ」を読んでいたので、開作氏の三男として
2つ目は、世界で活躍するマエストロとして
どちらも読了後、裏切りがなかったです。
1つ目については、開作氏が満州で「五族協和」を理想とし、民族の隔てなく付き合っていたという姿と小澤征爾氏が重なりました。カラヤン氏やバーンスタイン氏など超巨匠に可愛がられるだけでなく、気難しい指揮者や音楽監督仲間とも親しくつきあう人柄は開作氏の話と重なりました。
2つ目については、個人的なものですが、私自身、指揮者とオーケストラの様子みたくてコンサートに行くので(そのため席はかぶりつきで前の席に)、小澤氏は指揮者として、こういう風に音楽を捉えるのかなどと素人ながら興味深く読みました。
この本の刊行から4年後、松本で例年行われていたサイトウ・キネン・フェスティバル松本(Saito Kinen Festival, SKF)は、2015年にセイジ・オザワ 松本フェスティバル (Seiji Ozawa Matsumoto Festival, OMF)と名前を変えて、開催されています。しかし、2020年は新型コロナウィルスの影響で、フェスティバルは中止となりました。
姉が数年前から松本の近くに住んでいるので、松本に行くたびにフェスティバルのポスターを目にして、行きたいなあと思いながら実現せずにいましたが、是非次は行きたいなあと思います。
セイジ・オザワ 松本フェスティバルに行く前には、一度この本を読まれてから行くことをお薦めします。
小澤征爾さんと、音楽について話をする / 小澤征爾、村上春樹 共著
東京 : 新潮社 , 2011
375p ; 19cm