第84号:サルデーニャの蜂蜜は、未知の味・・・「サルデーニャの蜜蜂」

今週はお盆ウィーク。いつもの夏とだいぶ違いますね。

遅ればせながら、内田洋子さんの「サルデーニャの蜜蜂」を読みました。

 

この本は、タイトルとなっている「サルデーニャの蜜蜂」含む、15編から成ります。ノンフィクションだそうです。いつもながら、内田さんの文章を読むとその情景がありありと目に浮かんできます。もちろん、全てが場所が特定されているわけではないですし、行ったことがない場所がほとんどで、その場所も登場人物も知るよしもない私なのですが・・・。

 

例えば、「どんなに寒くても必ず軍手のようなごつい手袋を外してから、荒れてガサガサの両手で私の手を包み込むようにして挨拶した」(本書「寡婦」から引用)のブルーナという女性のシーンは、まるで私も内田さんの横で、白い息を吐きながら握ってくる手の感覚さえ感じる気がします。

 

さて、このタイトルになっている短編「サルデーニャの蜜蜂」では、カリアリの港から人気のない道をひたすら車で走り、目印はユーカリの大木や赤い岩と言われて、訪ねていく養蜂家は古代ローマ時代から続いているといいます。古代ローマ皇帝もお気に入りだった蜂蜜で、一匙で万病を治すと珍重されたそうです。苦い、そして甘みだけ残して苦味が消えるそうで、どんな味なのか?タイムの密生する山裾とは?と、より強く想像し、最後にはやっぱり行ってみたくなります。だいぶ前に、サルデーニャ行くはずの計画が頓挫したことがあり、今更悔やんでみたり・・・。

 

以前、内田さんが船上生活をしていたという話をラジオ番組に出演されたときに知り、どうして?と思ったのですが、そのきっかけのような話もでてきます。ちょっとしたさりげない言葉に、船上生活の内田さんを想像してみたり。

 

それぞれの章には、印象に残る登場人物が出てきます。どの人物も興味深く、ときおり切なくなったりします。

 

余談ですが、内田さんがインスタに載せていてオリヴェッティの「Lattera32」というタイプライターが本書で出てきて、これだったのかと思ったり。本とSNSを活用する今ならではの読み方もできています。

 

内田さんは高名で、多忙にも関わらず、インスタの一般のフォロワーにもコメントしてくださったりします。以前よりも、より内田さんを近く感じるようになりました。そのせいもあって、言葉が素直にすっと入ってきて、情景がありあり浮かんでくる気がするんです。

 

いままであれば、本は作家が書いたという完了形もしくは過去形で、読者とある意味切り離されていたものだったのですが、SNSで内田さんという作家が離れたイタリアで(日本にいてもどこにいても)、いまも生きていて、活動しているって身近に感じながら読むと、血が通うというか、なにか心にあたたかいものを感じます。

 

これって、とても素敵なことですね。

 

サルデーニャの蜜蜂

サルデーニャの蜜蜂 / 内田 洋子著

東京 : 小学館 , 2020

253p ; 20cm