umemedaka-style’s diary

本と旅をつなぐブログ

第79号:歴史的な日々の記録・・・小説『喝采』

.entry-content {   font-size:16px; }

皆さん、お元気でお過ごしでしょうか。

コロナ禍以降、SNSでおもしろ動画や応援動画を送りあいシェアすることが流行っていますが、皆さんはいかがでしょうか。

 

今回は友人からの情報で教えてもらいましたが、コロナ禍によりロックダウンされたパリにいた原田マハさんが、SNSTwitter)発信で、18日間の連続小説「喝采」を連載されたので、紹介してみたいと思います。

 

下記の公式サイトから小説「喝采」を読むことができます。

 

haradamaha.com

 

旅行業という仕事柄、このコロナウィルスの拡がりをかなり注意を払ってウォッチングしてきた私ですが、当初1月末の春節の頃に武漢でのコロナウィルスが流行り始めて、日本にも感染が出始め、クルーズ船が横浜で沖止めになったまま何日も経って、現代とは思えない対応に、まさに14世紀のペストの流行の際にベネチアで40日間沖止めにした船から由来すると聞いた「quarantine」という言葉がまず頭に浮かびました。

 

2月には何とか大丈夫だった欧州が、3月初旬にイタリアを皮切りに感染者が出始め、あっという間に拡がっていく様子に驚きと自分のお客さまが3月からは全員欧州行きを断念していたことに胸をなでおろす日々でした。

 

例年であれば、イタリアではミモザの黄色い花を持った男性が歩く姿が見られ、女性解放デーでもあるFesta della donna(フェスタ・デラ・ドンナ)の3月8日に、イタリアの北部はロックダウンに入り、日本の外務省は感染症危険度レベル3(渡航中止勧告)に引き上げを行い、数日の間にそれに追随する形で欧州各国がレベル3になっていきました。20年近い旅行業において欧州の主要エリアにレベル3が出た体験をしたことがありませんでした。

 

この小説「喝采」についての メールインタビュー原田マハさんは下記のようにこたえています。

『暗幕のゲルニカ』や『美しき愚かものたちのタブロー』でも書きましたが、1940年にナチス・ドイツによるフランス侵攻とパリ占領という歴史的瞬間がありました。まさにそれに匹敵する瞬間に立ち会っていると気づいた時、私は自分ができる方法で、このことを記録に残したいと思い、リアルタイムで小説を書こうと思い立ちました。

 

歴史的な出来事が起きている中にいるとは私も思っていましたが、こういうときに現場でリアルタイムに記録をするというのは、後世においてもとても大事なことなのではないかと思いました。

 

原田マハさんはロックダウンが始まったパリでの様子を写真と小説として文章で18日間にわたってTwitterという手法で発信しました。この発信の仕方はまさに現代らしい手法です。でも、この状況はペストやスペイン風邪といった、かつて猛威を振るったウィルスと直面するという点では、歴史は繰り返すという言葉を思い出さざる得ません。

 

原田マハさんは、さらにインタビューの中で、

あらためて日本と欧米の文化や習慣の相違を見つめ直してみると、日本人には「公衆の面前」とか「人前」という意識、「恥」の文化があります。その感覚が欧米人と比べて相当強い。あくまでも私見ですが、それが今回のパンデミックでは有利に働いているのではないかと感じています。

 

このように書き綴っています。日本人は公衆衛生の意識が高く、欧米人にはわかりずらい重層的な独特の世界観があるのかもしれません。これが今回のウィルスには多少強みとなるのかもしれません。

 

コロナ禍よりも以前の話ですが、フランスにかなり長く在住していた年配の知人と話した際に、簡単に言うとフランスは「性悪説」で考えて、日本は「性善説」で物事を考えるという話を聞きました。今回の各国の政府の初動対応や対策の違いはなんぞやと考えていて、欧州諸国と日本の民度の違いや諸々の違いを考えていた時にこの話が思い出され、妙に端的で私としては腑に落ちました。

 

 

私は仕事上、特に欧州への旅行を中心としていたので、仕事の平常化を考えると長いトンネルに入ったばかりです。第2波、第3波もあるといわれ、トンネルの出口は全く見えてきません。

 

アフターコロナではどんな世界が広がっているのかと日々考える私がいます。でもその世界を見られなかった志村けんさんやたくさんの方々を思うとシュンとして、悲しくなる私もいます。

 

いつもは何かしらに物言いをしたり、辛口な私ではありますが、いまウィルスに立ち向かい平常に戻していくには、批判と分断ではなく、賛同と団結ではないかと個人的には思っています。日本人ならではの「喝采」の仕方があるかもしれません。

 

収束していつもの通りの日々を取り戻し、この日々のことをいつか冷静に振り返る日が来ますように。

 

小説「喝采」メールインタビュー vol. 1 | 原田マハ公式ウェブサイト

小説「喝采」メールインタビュー vol. 2 | 原田マハ公式ウェブサイト

小説「喝采」メールインタビュー vol. 3 | 原田マハ公式ウェブサイト