第72号:南仏プロヴァンスは永遠に不滅です!・・・「南仏プロヴァンスの25年 あのころと今」

前回、1999年に刊行したピーター・メイル「南仏プロヴァンスの昼下り」を紹介しましたが、今回2018年1月に発表された「南仏プロヴァンスの25年 あのころと今」を読みました。

 

リュベロンに住むきっかけになったエピソードから始まり、最近のリュベロンの町の様子を伝えています。物価が上がったり、夏のバカンスシーズンには大挙して人は訪れる場所にはなったものの、バカンスシーズンが終われば、いつものリュベロンの素顔に戻り、ピーター・メイル氏の眼差しも変わらないので、以前と全く変わっていないのではという錯覚に陥りそうです。

 

以前のエッセイと比べると、だいぶ文章のボリュームが減っていることと、前のめりの感じはなくなっていたのですが、それは長く住むことで著者がリュベロンで馴染んできたことによるものかなと思いながら読んでいましたが、あとがきを読むと、ニューヨークのアルフレッド・A・クノップ社で、この本は2018年に刊行されて、くしくもこの年の1月にピーター・メイル氏は亡くなっていたそうです。ご自宅のそばの病院で亡くなったようです。この本は絶筆にして遺作となってしまいました。

 

2018年から25年前というと、1993年となるので、彼の初のエッセイ(随筆)だった「南仏プロヴァンスの12か月」(1989年)、「南仏プロヴァンスの木陰から」(1991年)の発表年とも微妙に違うようなので、少し気になりました。彼がプロヴァンスに骨をうずめると決めた時から25年なのでしょうか・・・。その後、この本で書かれていますが、2002年にレジヨン・ド・ヌール勲爵士を受賞し、正真正銘プロヴァンスに受け入れられた喜びが書かれています。

 

今回の本では、現在に近いリュベロンの様子。街のイベントや英国でのコピーライター時代からの友人で、映画「グラディエーター」の監督であるリドリー・スコット氏のリュベロンの家がピーター・メイル氏の自宅の近くにあったことがわかり、映画「プロヴァンスの贈り物」が映画化されることになった逸話なども書かれています。

 

なるほど、それでラッセルクロウ。と腑に落ちたのですが、キュキュロンの村で撮影されたそうです。映画の監督がリドリー・スコットと聞いて、あれっと思ったことが腑に落ちました。

 

冬が終わり、アーモンドの花、新緑、蝶が飛び交い、鶯が鳴き、エニシダの花が咲き誇る、夜になるとアマガエルとフクロウがなきはじめるというような春から初夏にかけてのそのよろこびを表した文章が出てきます。

 

彼の知人であり、生粋のプロヴァンス人で誰よりもプロヴァンスを知るムッシュ・ファリグールの言葉を借りれば『神の恵みのささやかな贅沢』という季節が冬のあとには来るそうです。

 

緩慢、齷齪(あくせく)しないプロヴァンス人たちの生活、日本人の私にとっては、この本を読んで想像を巡らせることしかできません。

 

プロヴァンスで生活するのは現実的ではないかもしれないけれど、日本でもそういう風に生活できる土地があるのではないかしら、いやいやそういう心持ちで(場所はどこでも)日々生きられないかしら・・・と考えてしまいました。

 

多分ピーター・メイル氏も長嶋さんみたいに引退の言葉は、「南仏プロヴァンスは永遠に不滅です!」と言いたかったのではないかな・・・と勝手に思った私でした。

 

 

南仏プロヴァンスの25年 あのころと今

南仏プロヴァンスの25年 あのころと今 / ピーター・メイル

;池 央耿訳

東京 : 河出書房新書, 2019 

190p ; 20㎝

原書名: My Twenty-Five Years in Provence

著者原綴: Peter Mayle