umemedaka-style’s diary

本と旅をつなぐブログ

第69号:車で行く那須の旅・・・「Red」

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先日から公開が始まった映画「Red」の原作本を読みました。

先々週のNHKアサイチでは、作者の島本理生さんと今回の映画で監督をしている三島有紀子さんが出演しており、映画と小説では結末が違うということを話しており、その結末が島本さんはとても良かったと話していたので、映画自体も気になるところです。

 

文庫として約500ページになる長編ですが、ぐいぐい引き込まれて2日で読んでしまいました。

 

主人公塔子は30歳。娘と夫の真と夫の両親と世田谷で暮らしています。夫はイケメンで一流企業に勤め、経済的に不自由もなく、同居の母とも女友達のように仲が良く、幸せそうに見えます。

 

しかし、塔子は復職するはずが両親と同居というマイナスポイントもあり、保育園がなかなか決まらず、結局仕事を辞めて専業主婦をしていました。

 

友人の結婚式で、10年程前の大学生の頃に塔子がバイトをしていた会社の社長だった鞍田と再会します。

 

その後、以前の会社を離れ知人の会社を手伝っている鞍田がその会社で求人しているので塔子に働いてみないかと誘い、契約社員として塔子はその会社で働くようになりました。

 

 那須には、塔子の家族が熱海へ旅行に行っている週末に、塔子は社外研修が京橋であり、その足で鞍田の車で那須湯本の乃木将軍が来ていたいう宿に1泊ででかけます。

 

那須という午後からでも行ける近場感。東北道は週末でもだいたい道がすいているので、確かに時間のない塔子と束の間の旅に出かけるにはちょうどいい場所かもしれません。

 

この小説では、具体的には、那須と金沢と鎌倉という場所が出てきます。それによって、なにか空気感が変わり、距離的にも東京と離れ、塔子の気持ちが解放されていく感じとリンクしています。

 

同じ栃木でも日光は私も行くこともあったけれど、那須には友人の結婚式で友人とがやがや1回行ったきりでその後、行ったことがありません。那須湯本があることも、あの「那須与一」とゆかりがある土地だということもこの小説で今更知ったのでした。

 

那須というといい宿を目当てに、車で少ししっとりとした大人の旅がたしかに似合うかもしれません。

 

映画の宣伝を見てしまったので、映画で演じている夏帆さん、妻夫木さん、柄本佑さん、間宮祥太朗さんのイメージが色濃く、どうしても私の中でイメージ画像がそれで出来てしまったけれど、男女の生々しさの中に、問題提起も多く、なかなかおすすめです。主人公以外のセリフも深く、巧みな効果があり、うーんと唸ってしまうのでした。

 

ネタばれができないので、あまり書けませんが、柄本佑さん演じる塔子の同僚で癖の強い人物としてでてくる小鷹が、塔子の夫の真を「童貞マインド」と称するのですが、そればまさに言い当てて妙で、お若い方には、そういう「童貞マインド」の一見品行方正に見えるイケメンの好青年とおつきあるするときにはご注意くださいと私は強く申し上げたいです。

 

 

Red (中公文庫)

レッド(Red)/  島本理生

東京 : 中央公論     ,  2017

503p ; 16㎝