umemedaka-style’s diary

本と旅をつなぐブログ

第65号:貴方の巡礼の目的は?・・・「スペイン巡礼 緑の大地を歩く」

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前回の第64号に引きつづき、サンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅行記を読みました。今回は、渡辺孝さんの「スペイン巡礼 緑の大地を歩く」という本です。

 

前回の「人生に疲れたらスペイン巡礼 飲み、食べ、歩く800キロの旅」と同じくサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからの出発。やはり最近は映画「The way」(邦題「星の旅人たち」)の影響が大きいのかもしれません。

 

前回の30代の小野美由紀さんと、60代の今回の著者渡辺さんとは巡礼のスタイルはもちろん違い、年齢に合わせた巡礼のスタイルということがあることを身をもって記録してくれています。

 

途中足を痛めて、バスや列車でスキップするのも、それはそれでありだし、公営アルベルゲは利用せずに、私営のアルベルゲやホテルを利用するというやり方についても、たぶん巡礼するのなら、こちらのスタイルに近いかもと思った読者も多いのではないかと思います。私も断然こちらだと思いました。

 

著者は私学の大学理事長を務め、いろいろなことが著者なりにあり、ずっと気になっていた巡礼に出た模様。巡礼ツアーに参加して下見し、その約7か月後に780キロ、結果的に40日近くに及ぶ巡礼に出ています。

 

今回のタイトル「貴方の巡礼の目的は?」は、この本のエピローグにあり、このワードは、「ある程度親しくなってからでないと、なかなか切り出せない。何故か。」とあり、多分読んでいない人には意外に感じられるかもしれませんが、この本を読んだ後は、何となく気持ちがわかります。著者曰く、「それは多くの場合、巡礼の目的がその人のそれまでの人生と深く関係し、場合によっては非常にデリケートな質問となるからだ。」とあり、そんなデリカシーを持つ著者に好感を持ちます。

 

著者のいうように、仕事や人間関係の悩み等様々なストレスは、人の内面に「滓(おり)」のように沈殿し、堆積していく・・・、知らず知らずのうちに「人生の滓」が溜まっていくということは誰しもが感じることではないかと思います。

 

カミーノを歩いていると、いろいろなことを思い出し、考えもするが、いつしか歩くことに集中するらしいです。巡礼の本を読むと感じることですが、これは瞑想に近い境地になっていくのではないかと思います。そんな時間を持つことで、心が癒されていく感覚が持てるのかもしれません。

 

中世の時代の人々もカミーノを歩き、現代人もカミーノを歩きます。もちろん、中世の人にはより信仰に基づくものもあったとは思いますが、現代人にも通ずる何かがそこにはあるのだと思います。これは歩いてみた人ではないと結局わからないことですね。

 

あなたが巡礼に出るとしたら、どんな目的なのでしょう。

 

スペイン巡礼 緑の大地を歩く

 

スペイン巡礼 : 緑の大地を歩く / 渡辺 孝著

東京 : 皓星社 , 2019

264p ; 19cm