サマーバケーションとして、7月7日の七夕の京都の記事からずっとお休みしていましたが、旧暦の七夕も過ぎて、そろそろバケーションも終わりでしょ、という時期になりました。
もうすっかり秋ですね。こんなに夏が短く、物足りなさを感じた夏って、ここ最近ありませんでした。なんとなく、さびしくなったりします。
ミュリエル・バルベリ著『優雅なハリネズミ』は、パリのグルネル通り7番地の高級アパルトマンで管理人をしているポルトガル出身のルネ(マダム・ミシェル)と、そのアパルトマンに住むジョゼ家の次女で12歳のパロマの文章で構成されています。それぞれの文章は字体が変えてあります。
ルネこと、マダム・ミシェルは、ポルトガル人で、管理人というイメージ(高級アパルトマンの住人は少し下に見ていて、ルネに対する慇懃無礼な様子が描かれています)よりも、とても知的で、音楽、絵画など芸術やあらゆることに造詣が深く、いつも知的な本を読んでいたりします。しかし、それが住人に見つからると面倒なこともあり、いつも誰からもわからないようにしています。夫が亡くなった後は一人暮らしをしていますが、唯一、マダム・ミシェルの知的で優雅な暮らしぶりを知るのは、同じくポルトガル人で、家政婦をしていて、最高の手作り菓子を作り、それを持ってマダム・ミシェルのところにお茶をしに来るマニュエラだけです。彼女も、貴婦人と呼ぶにふさわしい人物です。
パロマは、自殺願望があり、このアパルトマンに火をつけるつもりでしたが、ルネと、のちほど引っ越してくるオヅ氏(日本人)との出会いによって、その考えが変わってきます。
パロマがマダム・ミシェルと初めてちゃんと話をしたときに、パロマのかしこさと、ルネの知性はお互いに通じるものがありました。パロマは、マダム・ミシェルをこう評しています。
マダム・ミシェルは優雅なハリネズミです。外見は棘でがっちりした砦で覆っているけれども、心はとても高貴な人です。ものぐさなふりをして、頑として孤独を守り、すばらしく洗練されている。まさにハリネズミです。
アパルトマンの高名な料理評論家のアルサン氏(なんともいけ好かない人物でしたが)が急死し、売りに出された部屋を洗練された部屋に大改装し、引っ越してきたのがオヅ氏でした。
オヅ氏(小津監督の遠縁という設定)は、洗練されていて、しかもやさしく紳士的。
ルネの飼っているネコは、レオン・トルストイの名からとって、レオン。オヅ氏のネコは、レーヴィンとキティという名で、ロシアの大作家と彼が愛した女の名前。
オヅ氏は、マダム・ミシェルの知性をすぐに見破り、オヅ氏はマダム・ミシェルをよく知りたいと思うようになりました。オヅ氏とマダム・ミシェルがさらに親愛なる友人えとなるべく交友を深めていたある日・・・。
たまたま、この本を読んだすぐあとに、英国を扱った旅番組があり、英国では、「ハリネズミは美しい庭にしか現れない」と言われていると聞いて、この小説は舞台はパリですが、なるほど~と妙に納得してしまいました。
優雅なハリネズミ / ミュリエル・バルベリ著 ; 河村 真紀子訳
東京 : 早川書房, 2008
372p , 19㎝
原文書名: L'elegance du herisson
著者原綴: Barbery, Muriel