すっかりご無沙汰しており、すみません・・・
ここにきて新型コロナウィルス(COVID-19)の影響がじわりと来ています。私が旅行業界に入ったのが2000年でしたので、その間にはいろいろなことがありました。2001年のアメリカの同時多発テロ、SARS、ユーロの暴騰など、そのたびに「また、キターッ」という感じで、数か月は影響を受け、そのすきに日ごろの忙しさを癒すべく心の洗濯をしてきた私です。SARSのときのマスコミの報道の始まりも確かこんな感じだったと思いおこすのでした・・・
さて、今日は朝倉かすみさんの書いた「田村はまだか」です。
舞台は深夜の札幌のバー「チャオ!」。小学校のクラス会の3次会で深夜のバーに集まった40歳になる男女5人。
「孤高の小6」と言われた同級生の田村。中学からは栃木の親戚の家に預けられ、豆腐屋に弟子入りし、店を店主から譲られ今ではパートを雇うほどになり豆腐屋をやっているという田村。
同級生の中村理香(一匹狼的な彼女)とその後結婚したという。クラス会には間に合わないが家族旅行を兼ねて札幌へきてこの3次会に出るという話だが、田村はなかなか現れません。
田村はシングルマザーの家庭で、遠足にお弁当も持たされなかったエピソードや中学から親戚の家に預けられたりと苦労人でしたが、それでも同級生は彼を気にかけており、ちょっと強気で誰にも迎合しない中村理香についても気になっていました。
話は後半から思いがけない展開になっていきますが、クラス会に参加した男女5人(永田♂、池内♂、千夏♀、坪田♂、班長♀)と「チャオ!」のマスターetc...、それぞれの約30年に歴史あり、絡みあり、そのエピソードがうまくまとまりをもって構成されています。田村の父ではないかと思わせる男性(ネタばれしたくないのであまり詳しく書けませんが)のエピソードが巧妙に挟み込まれています。
札幌と言えば、適度に都会、でも少し郊外にはレジャーもあって、住みやすそうなイメージ。帰省を利用して同級生に会うというのが、東京近辺の人間にはない感覚で、この感じがなんだか羨ましくも思います。
個人的な話を書けば、大学を卒業後初めての傷心のひとり旅は、札幌と小樽でした。寒くなりつつある11月初旬。
札幌ではクラーク博士で有名な羊ヶ丘に行き、岩井俊二監督の映画「Love Letter」の影響と村松友視の「海猫屋の客」に触発されて小樽ではひたすら街歩き。
その旅の最後になって、その彼との写真をまだ捨ててないことを思い出し、慌てて新千歳空港のゴミ箱に捨てた私でした。
私にとっては忘れ難い思い出です。
田村はまだか / 朝倉 かすみ著
東京:光文社 , 2010
303p , 16㎝