第57号:ドナウの水面を想う・・・「ドナウの旅人」

いまちょうど、ブダペストに行くお客様への案内を考えていた。

前号のプラハでも書いたように、中欧の旅の1つとしてハンガリーブダペストには、以前はよく行った。ドナウ川をはさんで、西側のブダ地区と東側のペシュト地区が一緒になってブダペシュト。

ドナウ川

ヨーロッパ中部から東部を流れる川。ボルガ川に次ぐヨーロッパ第2の長流で,全長約 2850km,流域面積約 81万 5000km2

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について

チェコスロバキアからハンガリーに入ってくると、またちょっと人の雰囲気も言葉もスラブ系とは違う雰囲気になる。

 

ハンガリーの人は子供時代には、日本人と同じようにおしりに蒙古斑があり、欧米圏では通常、名前がファーストネーム(名)、ラストネーム(姓)となるが、ハンガリーの人は姓が先で、名前が後で、日本人と同じような並びだとその当時ガイドから説明された記憶がある。ハンガリー人、いや正式には、マジャール人には、東洋の血が流れているということが、なんともエキゾチックな感じがする。

 

ドナウ川は、世界で2番目に長く、いくつもの国を通る国際河川であるが、そのドナウが貫通する首都は3つあるというウィーン、ブダペストベオグラードの3つ。黒い森から端を発して、黒海へ流れ込むと何とも覚えやすいと思った記憶がある。

 

私はウィーンとブダペストにしか行ったことがないが、ウィーンは真ん中を貫通するというより、北側から中心部よりやや東側に斜めにドナウ(ダニューブ)川が流れている。

 

そして、ブダペストでは首都の中心部の真ん中を北から南へ、ほぼ真っすぐに、まるで主役という感じで、ドナウ川が流れている。

 

そんなこともあって、ドナウ川というと、私はどうしてもブダペストのあのキラキラ輝く水面を思い出さずにはいられない。

 

前段が長くなってしまったが、宮本輝氏の著書「ドナウの旅人」。

主人公麻沙子の母絹子が家を出た。置き手紙にはドナウに沿って旅をするという言葉。

麻沙子は、母を探しに、ドナウの起点となるシュヴァルツヴァルト(黒い森地方)のドナウエッシンゲンにアクセスしやすい、かつて彼女が住んでいたフランクフルトへ向かった。フランクフルトで、かつての恋人シギィと友人ピーターと合流し、ドナウ川下流へ向かって母を探して旅をでることになる。

 

フランクフルトに来てみると母は、ある男といたことがわかる。ドナウ川を下りながら探していたところ、母絹子とその男・長瀬を見つけた。絹子を麻沙子たちに引き渡し、死の旅に出ようと考えていた長瀬をそのまま放ってはおけず、その後、麻沙子、シギィ、絹子、長瀬は4人で旅をつづけた。終着地はルーマニア黒海へそそぐ河口の町。

 

この小説では、ドナウ川沿いの町を経由しながら、物語が展開していく。朝日新聞の連載だったらしく、連載で読んだらどんなに毎回楽しみだったろうと想像する。

なんといっても、宮本輝氏の言葉の一つ一つの優しさが心にしみる。

 

ドナウの旅人(上) (新潮文庫)

ドナウの旅人(下) (新潮文庫)

ドナウの旅人 / 宮本 輝著

東京 :  新潮社  ,1988

上巻 p.298   下巻 p.303