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本と旅をつなぐブログ

第53号:ヴァカンツァはイスキア島へ・・・「ナポリの物語2 『新しい名字』」

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エレナ・フェッランテ著のナポリ物語シリーズの第2巻の『新しい名字』(原題 Storia del nuovo cognome)を読みました。

 

待望の第2巻です。イタリアでは2012年に発刊されていたようですが、日本では今年2018年5月に発刊されました。私はうっかりリサーチ忘れで、すでに発刊されていたことを知らずに過ごしていました。

 

私のフランス語の先生(フランス人と日本人のハーフ)によると、フランスでもベストセラーだったようです。アメリカのHBOでもドラマ化されたという話も聞きました。彼女もこの本をすでにフランス語で読んでいたので、意気投合してしまいました。

 

以前、このブログでも書きましたが、第1巻は主人公エレナ・グレーコ(通称レヌッチャ)と幼なじみのリラの二人のナポリでの成長物語。後半はリラの結婚が中心となり終わりました。もちろん、そこへの道のりは読みごたえがあり、読者を飽きさせてない展開です。

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第2巻は、その続きが展開します。リラは新婚旅行でアマルフィに出かけ、そこでも、夫と全てにおいて分かり合うことができない悟ってしまいます。不仲な状態は続き、子宝にも恵まれず周囲からも揶揄されます。(1960年代のナポリを舞台にしており、いまよりも保守的な考えが一般的だった時代の話です。)

妊娠できないリラには海がいいと医師に薦められて、夫ステファノも海に行くことを薦めるのでした。

 

リラは、学生をしているレヌッチャにも、その海での保養への同行を懇願します。当初予定のナポリ近郊の海岸ではなく、レヌッチャが行きたいと言ったイスキア島に家を借り、夏の間滞在することを決めました。

 

そこで、リラとリラの兄リーノと結婚して妊娠中の義姉ピヌッチャとリラの母で、ピヌッチャの義母であるヌンツァとレヌッチャの4人でイスキア島に出かけることになりました。夫のステファノと、リラの兄で、ピヌッチャの夫リーノの2人は週末に妻たちの元に通うという夏が展開します。

 

レヌッチャがイスキア島に行きたいと言ったのは、第1巻でも出てきましたが、同じ地区の出身で幼なじみでもあり(すでに地区は離れていましたが)、高校の先輩で学年一の成績で卒業したニーノがこの夏もイスキア島に行くからおいでと声を掛けられていたからでした。

 

そして、レヌッチャ、リラ、ピヌッチャが滞在したのはチターラの浜の近くで、毎日海に出かけていくのでした。そうするうちに、レヌッチャはどうしてもニーノと会いたくなり、彼の家族の持つ別荘のあるバラーノやマロンティの浜の近くに出かけていきます。そして、ニーノとの再会を果たします。

 

イスキアでは、ニーノは父親と不仲なため、フォーリオに別荘を持つ友人と過ごす日が多くなります。その友人でサラミ工場を経営する一族のブルーノともに、ニーノはレヌッチャやリラたちがいる浜まで遊びに来るようになります。

 

ほぼ毎日彼らと楽しく親しく過ごすうちに、ピヌッチャはブルーノへの恋心を自分自身で心配してナポリに帰ってしまい、リラとレヌッチャとニーノとブルーノで過ごす時間が始まります。レヌッチャが憧れていたニーノは、最初こそリラとは距離を保っていたものの、昔からリラのことを想っていたというニーノとリラは一気に距離を縮め、烈火のごとく愛し合うようになってしまうのでした。

 

ナポリに帰ってからも、二人の熱は冷めず、リラとニーノは密会を続け、ついに別の地区で駆け落ちのような生活を始めますが、1か月程で破綻。リラは夫ステファノの元に戻ります。そして、ニーノとの子供を妊娠、出産し、夫ステファノと諍いながらも母親業に専念します。でも、そんな時間も長くは続かず、歪みのできた夫婦の関係は元に戻ることもなく、ステファノにも愛人が出来てしまいます。(愛人も元カレも何も全部、もともと同じ地区に住む人たちの中で展開します)

 

レヌッチャは、ニーノへの想いがかなわぬものとなり、そんなおり成績の優秀だった彼女は、学生寮付きのピサの大学への入学が許可されます。そして、ナポリから離れ、単身ピサで大学生活を送ることになります。

 

リラとレヌッチャが会わなかった時間も長く、会わなかった時間に関しては、周囲の人々からの話を総合して、レヌッチャは知ることとなりますが、リラとレヌッチャは、レヌッチャの帰郷のタイミングで会うこともあれば、会わないこともあります。お互いの痛みを理解したり、時には批判的に思い距離を置いたり、でも再会するとわだかまりもなく受け入れられたり、という時期を繰り返しながら二人の関係は続いていくのでした。

 

第2巻もこの先の続きを感じさせる形で終わります。第1巻の冒頭が、リラが居なくなったことを、息子のリーノがレヌッチャに伝えてくる電話で始まっているので、この先、どんなことが起きて、第1巻の冒頭の電話までたどり着くのか、読者は気になってしょうがないのです。

 

そして、あの夏にリラとレヌッチャ(ピヌッチャとヌンツァと同行)がヴァカンツァのシーズンを過ごしたイスキア島は彼女たちにとって、とても美しく楽しい時期として、この物語で印象的に描かれるのでした。

 

このイスキア島について、少し。

イスキア島はナポリの沖にあり、温泉が湧くことでも有名です。

とはいっても日本の方には距離感がつかみずらいのでお伝えすると、ローマとナポリは車で約2時間程、ナポリの港からイスキア島へはフェリーで2時間程です。

 

距離感としてイメージすると、東京から少し離れた熱海をナポリとイメージすると、熱海から夏場だけ出ている神津島行きのフェリーに2時間弱乗船するようなイメージです。

 

さらに、熱海から陸路で海沿いの道を1時間半程、下田へ向かうのが、ナポリアマルフィの距離感に似ています。

 

このくらいの距離間でも、イタリア人はヴァカンツァ用の家を月単位で借りて、海辺で夏を過ごす。イタリア人の誰もがというわけではありませんが、何とも優雅な夏の習慣ですね。

 

日本人の生活もこのように変われば、もしかすると地方の活性化もあるのではないかとふと思います。

 

新しい名字 (ナポリの物語2)

新しい名字 / エレナ・フェッランテ著 ; 飯田 亮介訳

東京 : 早川書房 ,  2018

624p ,  19㎝. - (ナポリの物語 2)

著書原綴: Storia del nuovo cognome

著者原綴: Elena Ferrante