第51号:「六月の雪」とは・・・台南

2018年5月に発刊された乃南アサさんの「六月の雪」。

 

台湾の台南を舞台にしている。

主人公杉山未來は、祖母と二人で東京で暮らしている。両親は仕事の関係で、福岡で暮らしている。

 

未來は、アニメの声優を目指していたが諦めて、派遣社員で働いていた。派遣の3年の契約が終わる日、帰宅をするとうたたね寝していた祖母は台南の夢を見ていたという。

 

祖母は台南で生まれ、終戦になる16歳までこの地で暮らしていた。その時の記憶をいとおしそうに話した祖母。未來は、その日初めて祖母の生い立ちを知る。写真を取りに行くと2階に上がろうとして転倒し、そこから入院することになってしまった。

 

未來は、台南に行くことにする。祖母が暮らした場所を祖母の代わりに未來が見つけて、写真などで祖母に見せてあげたいと考えていた。

 

父の知り合いで現地で迎えてくれたのは、季怡華(リイカ)だった。無表情で考えていることがわかりずらい。未來は、彼女のことが気に入らない。季怡華と旅がスタートしたものの、季怡華が急用で戻ることになり、その後、季怡華と対象的な明るく屈託のない洪春霞(コウシュンカ)が旅を手助けしてくれ、さらに春霞(未來はかすみちゃんと呼んでいた)の友達の建知(ケンチ)や彼の高校の先生だった林(リン)先生が日本統治時代の歴史に詳しいということで協力してくれた。

 

仲間たちができ、少しずつ、祖母が通った学校や住んでいたエリアを見つけることができる。祖母が住んでいたと思われる家に住む劉がこの家で波乱万丈の人生を送ってきたことも知ることになる。

 

そして、いろいろな人と出会い過ごしていくうちに、祖母が言っていた「六月の雪」に辿り着くことができる。

 

後半になって、季怡華(リイカ)がなぜ無表情になったかという訳を意味することを、彼女が未來に話し始める。

 

終戦とともに、50年続いた日本統治が終わり、中国大陸から国民党の人々が入ってきた。台湾の人々は「犬(日本人)が去ってブタ(国民党)が来た」と評したという。その時代から一気に反日教育が行われ、いままで使っていた日本語も台湾語も禁止となり、中国語を話すように統制された。38年間にも及んだ長い戒厳令で、人々は思っていることを人前では話させなくなったという。春霞よりも年上の季怡華(リイカ)の世代になるとそういう時代の習慣が身についてしまっていると言う。

 

夢に破れて、何かの目標もできないまま30代を迎えていた未來は、この旅で台南での人々との出会い、林先生への淡い恋心をはぐくみ、日本に帰国後も台湾に留学し、中国語を学ぶという目標ができ始めていた。

 

そして、暖かい台南を舞台に「六月の雪」とは?

これは読んでからのお楽しみです。

 

六月の雪

六月の雪 / 乃南 アサ著

東京 : 文藝春秋    ,  2018

509p ; 20㎝