第42号:小説の中の静謐な真鶴・・・「真鶴」

G.W.後半、真鶴のあたりは渋滞しているだろうなと、想像してみる。

以前は、小田原に泊まりに出かけることが結構あったので、そのついでに真鶴を横目に見ながら国道135号線をドライブしたりもした。それでも、真鶴半島の突端の三ツ石の方面まで足をのばしたのは、たったの2回だ。

 

大学4年の時に、湯河原の吉浜に実家のあった友人がいて、その時の旅では、真鶴のことを教えてもらった記憶がある。美味しいひもの屋さんや、中川一政美術館や、その当時ドラマに出ていた女優さんがその親族であることなど。

 

今回読んだ川上弘美さんの「真鶴」という小説では、主人公京(ケイ)♀の失踪した夫礼♂が日記に残した真鶴の文字、夫と何か関連すると想起させる場所として真鶴が出てくる。

 

京は、3度ほど真鶴に出かけていく。憑き物のような、目に見えない存在について敏感に感じ取ることのできる京は、真鶴に行くごとに、そういう者と徐々に会話をするようになる。だんだんと、その者たちとの距離が縮まっていく様子がわかる。

 

この小説の中で描かれる世界は、全体的に、静かで、京そのものからも出てくる落ち着きのようなものが漂っている。ここで描かれる真鶴も夏の騒めきや海の音も遠く聞こえるようで、無音に近い静謐な世界として描かれている。

 

主人公京が、高校生になる娘の百(もも)とは1度だけ真鶴に行くが、それ以外はいつも一人でかけていく。なんとなく子供を寄せ付けない世界観がそこにはある。

 

この小説では、真鶴は実際あるのに、京にしか見えない真鶴として描かれる部分が大きく、まるで「ナルニア国物語」のワードローブの中の世界のように、それは近いようで遠い。

 

「真鶴」を読み終わってから、Google MAPで、あらためて真鶴の地形を見たり、実際にストリートビューで見たりすると、なんとなく小説のイメージと違かった。でも、こういうのも読書と旅の楽しみ方なのかもしれない。

 

真鶴 (文春文庫)

 

真鶴 / 川上 弘美著

東京 : 文藝春秋 , 2009

p.271 ; 16㎝