またまた、宮本輝さんの本です。ナポリから南下し、ティレニア海に面したソレント半島の付け根にあるポジターノが出てくる「朝の歓び」。アマルフィから夏は船、または通年バスで行くことができる。
この本、私は2005年に読んだのに、読んだことを全く忘れていて、2,3年前に上下巻買って読み始めたら、あー読んだことあったーと気づいて・・・、再読。
ここでは、主人公の良介45歳があてもなく会社を辞め、少し前に妻が亡くなり保険金が入ったこともあり、妻が亡くなったことをきっかけに別れた日出子と彼女の故郷の北陸の町で再会し、日出子が行きたがっていた南イタリアのポジターノに豪華旅行に行くことを良介が提案し、2人で旅に出ることにした。
日出子は、かつてポジターノに旅で訪れた時に、障害を持った少年パオロと出会った。そのパオロがどのように成長したか見たかったのである。
まずは、ローマに入ったが日出子の行動に一波乱、また、新婚旅行で、花婿に逃げれたさつきとも出会い、良介は日出子に内緒でさつきもポジターノに誘った。
ポジターノで、パオロは19歳になり、成長していた。決められた職場へのルートを往復することしかできないが、彼は革製品を作る工房で、決められた工程を作業し、自分でお金を稼ぐようになっていた。
良介はパオロの両親の苦労と、それでも惜しまない愛情をパオロから感じ、こんなセリフを言っている。
パオロを育てるにあたって、若かった夫婦には、前途は暗く、何もかもが絶望的で、頭を抱えて沈鬱にならざる得ないときばかりであったことだろう。
夫婦は、そのことに気づいて、自分たちがパオロという息子にしてやれることは、いかなる状況にあっても、笑顔で、明るく、陽気に接することだと決め、そのように努め、やがてその努力が、彼らに本来的な楽天性をもたらし、何もかもを突き抜けるような、真に幸福でありつづける人のような、陽気な笑顔の持ち主にしたのだ。きっと、そうに違いない・・・・。
パオロが通勤したポジターノへ向かうバス。アマルフィーからポジターノへ向かうバスの風景が思い浮かんでくる。海沿いのバスルート。たまに、無性に行きたくなったら、googleストリートビューで辿ってみると、少し楽しい気持ちになる。
便利な世の中だな。でも、やっぱり、実際に行きたいな。
朝の歓び / 宮本輝著
東京 : 講談社文庫 , 2014
15㎝
新装版ー講談社文庫上下巻