第30号:ハメーンリンナのサマーハウス・・・「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

村上春樹氏の作品は、ほぼ欠かさず読んでいるが、彼の作品自体を語ることは、私としてはおこがましくて、なかなかできない。今回も小説の内容は、ともかくとして、この小説の中に出てくる、多崎つくるが友人を訪ねたフィンランドのハメーンリンナについて書きたい。

 

私は、村上氏の長編も好きであるが、どちらかというと、この小説のように長編とまでいかないミドルの長さの作品がとても好きだ。

 

正直なところ、タイトルだけでも十分に興味がひかれるし、「巡礼の年」というのはリストの楽曲から来ているとなれば、なおさら、気になって仕方ないという作品だった。

 

この小説の中に、多崎つくるが高校時代をいつも一緒に過ごした友人4人が出てくる。それぞれに名前には色がついていた。アオ、アカ、シロ、クロ。

 

その中で、クロと呼ばれたエリは、結婚をしてヘルシンキに暮らしているが、多崎つくるが訪ねた時にはハメーンリンナにあるサマーハウスで過ごしていた。

 

36歳になった多崎つくるが、かつての友人に会うためにフィンランドのハメーンリンナへ、初めての海外旅行となる旅に出たというのは、それだけでも彼にとっては重要な旅であったことが想像できると思う。

 

ハメーンリンナはヘルシンキから列車で1時間。スオミ(湖沼)の国といわれるフィンランドらしさが感じられる湖沼地帯にある町で、夏には、ムーミン博物館があるタンペレからシルヴァ-ラインという船で湖沼巡りをしながらハメーリンナへいく航路もある。ハメーンリンナには、「フィンランディア」を作曲したシベリウスが誕生した家がいまも残っている。

 

小説から離れて想像してみる。いつもヘルシンキに住んでいて、夏になるとハメーンリンナのサマーハウスに住むというのはどんな感じなんだろうと。短い夏を謳歌するというのはそういう生活なのかもしれないなと思う。いつまで経っても暮れない夏の夜。

 

北欧の白夜を想像しながら、もう一度、この小説を読んで見ようと思う。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 / 村上 春樹著

東京 : 文春文庫 ,  2015

421p ; 16㎝

<2013年単行本初版>