ダン・ブラウン原作の「天使と悪魔」は2009年に、トム・ハンクスを主役に映画化された。2006年には、同じくダン・ブラウン原作の映画「ダ・ヴィンチ・コード」がすでに大ヒットしていた。
「天使と悪魔」は小説としては、「ダ・ヴィンチ・コード」よりも先に書かれたものだった。私がこの小説を読んだのは、話題になっていた「ダ・ヴィンチ・コード」を読んだ後の2006年頃である。面白くて、あっという間に読んだと記憶している。
私のようなトラベルコンシェルジュの元に、いまも「天使と悪魔」をテーマにローマを旅したいという依頼はある。
主人公は、「ダ・ヴィンチ・コード」同様にハーバードの象徴学の教授ロバート・ラングドン。彼もとに送られてきたFAXに写る遺体の胸には、かつての科学者集団の”イルミナティ”の焼印が押されていた。その写真の人物は、スイスの科学研究所セルンの所長レオナルド・ヴェトラだった。娘のヴィットリアと共同開発した反物質(放射線を発生しながら、小さな質量で大きな熱量を発する破壊兵器として使うことのできる物質)がなくなっていた。
そんな折、ヴァチカンでは前教皇が逝去し、コンクラーヴェ(次期教皇を決めるための選挙のようなもの)が行われていた。
コンクラーヴェに当然来るべきプレフェリーティと呼ばれる有力候補者たちの4人が会場に現れない。
4人のプレフェリーティの枢機卿たちは1時間ごとに1人ずつ殺されるとあり、猶予は4時間。そして、反物質の爆発もそのすぐ後に起こるという予告があった。
ラングトンは謎解きを始める。イルミナティの4元素は、土、空気、火、水。殺人は一つ一つ行われる。このキーワードをなすのは、ヴァチカンにとって、屈指の芸術家だったベルニーニだとたどり着く。彼の道しるべ ”セーニョ(啓示の道)”がキーワードだった。
かつてイルミナティの会員だったベルニーニが、イルミナティの科学の精神に共鳴する科学者たちにだけわかるように高度な道しるべをローマ各所の自分の作品に込めたのだった・・・。
犯人は本書で読んでいただくとして、この”セーニョ”を辿るべく、ローマを旅するというのは、なかなか面白い。
先日もこのブログで、❝ 第20号:『心変わり』・・・ローマへの列車の中で ❞で、バロックの巨匠ベルニーニとボッロミーニについて書いたが、ベルニーニの作品は、ヴァチカンのサン・ピエトロ広場以外にもたくさんある。
もちろん、小説ではあるけれど、ベルニーニを単なるバロックの芸術家として見るだけでなく、裏にある象徴みたいなもの思い描きながら歩いてまわるというのも、面白いと思う。
ぜひ、ローマに行くときには読んでから出かけてほしい。
天使と悪魔 : ヴィジュアル愛蔵版 / ダン・ブラウン著 ; 越前 敏弥訳
東京 ; 角川書店 , 2006
703p ; 22cm
本はかなりボリュームがあるので、ちょっと無理という方にはこちらお薦め。