第18号:「リラとわたし」にみるナポリの素顔の一つ

エレナ・フェッランテ著の「リラとわたし(ナポリの物語)」で描かれるナポリは、私が観光で目にしてきた、サンタルチア海岸、ヌオーヴォ城、王宮、ムニチピオ広場や、スパッカナポリとも少し違うナポリだった。

 

この小説は、アメリカでも人気があったそうだ。これは、シリーズの第1巻であり、この先はまだまだ続くらしいが、日本ではこの1巻が出たところ。なので、話もリラの結婚というところで、ひとまず終わっている。

 

この小説の「わたし」こと、エレナは冒頭に中年の女性として登場し、リラが居なくなったとその息子から電話がくるシーンで登場している。そのあと、子供の頃のナポリの郊外の団地での幼少時代の話がスタートする。「わたし」と同い年のリラとの出会いや、彼女と過ごした出来事が書かれている。リラは、けんかも何もめっぽう強くて、悪ガキでとどまらず、語学をやらせれば飲み込みが良く、読書家という驚くべき2面性を持った少女だった。「わたし」は、リラに刺激されて、負けじとコツコツと勉学にはげむタイプだ。

 

2人は同じ団地に住み、生活は貧しい。そのために、上の学校に行って勉強を続けることさえ、家族は喜ばない。「わたし」はコツコツと勉強を続け、その地区の一握りの人が行く上の学校に進んだ。語学の天才的才能もあるリラはいつしか学校ヘは行かなくなり、それでも、やせっぽちだったリラは、だんだんと花がひらくように成長とともに周囲の男子を魅了するほどに美しくなっていく、そして貧しい地域の中でも成功したと言われる家の青年と婚約し、結婚式を迎える。

 

2人は常にお互いのことを思いながらも、徐々に生きる道が分かれていく。それでも、この団地での人間関係は濃密で、成長していく2人に因縁のように、その後もまとわりついている。

 

「わたし」とリラは、ナポリに住んでいるが、子ども時代に海も見たことがないという。王宮やら、ナポリの中心部には行ったこともない。やっと大人に近づき、地区の男の子が車を乗るようになって、ナポリでもその地区以外に出かけるようになるという感じである。

 

ふと、3月にナポリからアマルフィーへの高台の道で、ベスビオ山とナポリの町を見下ろしたときに、こんなに町が広がっていると思ったことを思いだした。

 

ナポリと一言に行っても、イタリア第3の都市なのだ。これはあくまでも、ナポリの素顔の一つなのかもしれないと思った。

 

この2人のその先の人生が気になる。次巻が出ることが楽しみでならない。

 

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アマルフィに行く途中、ベスビオ山とナポリの町を眺める。

リラとわたし (ナポリの物語(1))

リラとわたし  /  エレナ フェッランテ 著 ;  飯田 亮介訳

東京 : 早川書房 ,  2017

432p ,  19㎝. - (ナポリの物語)

著者原綴: Elena Ferrante