先日、私が担当しているご夫婦がパリに約3週間滞在の旅に出た。若きアーティストなので、パリでの生活は、とても感性を刺激するものだったようだ。
ヘミングウェイの「移動祝祭日」は私の好きな小説だ。小説というか、読んでいるとエッセイみたいな雰囲気もある。ヘミングウェイの小説の中でも、やはり小粋で、華やかな感じのあるこの作品を、私はとても好きだ。2009年に高見浩さんの新訳がでて、また鮮やかに蘇った感じがある。私はこの新訳版を2013年2月に読んでいて、その感想文を読み返しながら、私自身のパリの思い出と重ね合わせている。
おもに、私は添乗員として、パリに出かけることが多かったが、10年以上前は会社によっては縛りも緩く、自由行動日は、添乗員も自由という日もあった。だから、朝からひたすらパリ左岸のサンジェルマンからモンパルナスあたりまでの界隈を、歩き回ったことを思いだす。偶然見つけた左岸のマリアージュフレールや、エルベシャペリエ、フラゴナールの路面店など、ただただ歩いているのになんとも気持ちがよかったことを思いだす。
この新訳版を読んだのは、添乗生活から足を洗った頃だったので、この小説に出てくるヘミングウェイが通ったカフェが今でもあるのかなとか、シェイクスピア書店(いまは2代目となっているらしいが)に行ってみたいなと思いながら読んだ。いつになるかわからないけど、おそらく次のパリの旅は、「移動祝祭日」を再読して、それもテーマの一つとなるだろう。
この小説とともに、是非見てもらいたのは、以前からの私のブログでも書いているが、ウディ・アレン監督の映画「ミッドナイト・イン・パリ」だ。これを見ると、その時代的な雰囲気がわかり(リアルに見えすぎてしまうのが、時には悪いときもあるけれど・・・)、さらに、ウディ・アレンの映画なので、ウィットに富んでいて、やはり面白い。
「もし、幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。なぜなら、パリは
a moveable feast だからだ。」
という言葉は有名であるが、ヘミングェイがライターのA・E・ホッチナーに語ったとされるそうだ。
冒頭のご夫婦も、きっといつかそんな風に感じるのではないかな・・・と思いを馳せた。
移動祝祭日 / アーネスト・ヘミングウェイ ; 高見浩訳
東京 : 新潮社 , 2009 , 197p ; 15㎝
英文書名 : A Moveable Feast